証券化の仕組み
サブプライム問題が話題になることが多くなっていますが、なぜ、サブプライム問題は早々に決着が付かないのでしょう?金融機関は、サブプライムに関する債権を、早々に放棄して膿を出してしまったほうがいいんじゃないか?と思われる方も多いと思います。しかし実際問題、サブプライムに関連した債権を自分たちが持っているのか、それを調査するには相当の努力が必要になります。そしてその背景には、証券化の存在があります。
図1 証券化の仕組み

参照:Chicago Fed Letter "The role of securitization in mortgae lending" |
多くの米国の住宅ローン債権は、元々のローンの貸し手(銀行)が長期間保有しているわけではありません。中間金融機関に売却されることが通例になっています。最近では、6割弱のローンが証券化されています。中間金融機関には、公的金融機関と私的金融機関が含まれています。公的金融機関では、Ginnie Mae(ジニー・メイ)、Fannie Mae(ファニー・メイ)、Fredie Mac(フレディー・マック)があります。
こういった中間金融機関が銀行などから住宅ローン債権を買い取ってきます。そして、それらの債権をひとまとめにして、さらに、小口化する。小口化したローン債権は、債券の形で投資家に販売されます。これが証券化です。そうして、発行される証券のことをモーゲージ証券(MBS)といいます。
ジニー・メイは連邦住宅局や復員軍人省といった政府関係機関で保証されている住宅ローンを証券化します。ジニー・メイは唯一連邦政府がその利払いや元本を保証しているものですが、その割合は、モーゲージ証券全体の約4%でしかありません。
ファニー・メイとフィレディー・マックは、政府が出資している機関ですが、その発行するモーゲージ証券の元本や利息の支払いに政府の保証がついているわけではありません。ファニー・メイとフィレディー・マックはモーゲージ証券全体の40%を占めています。
残りの56%は私的金融機関の発行するモーゲージ証券ということになります。
モーゲージ証券をさらに証券化する
モーゲージ証券(MBS)はさらに証券化されることがあります。図1でもMBSを使ってさらに仲介金融機関がCDOやSIVといった(2次的な)証券を発行しています。実は、サブプライム問題を複雑にしているのは、この更なる証券化です。
CDOやSIVというのはある特徴を持った証券の総称と考えていただいて結構なのですが、こういった2次的な証券がなぜ作られるかという理由は、図2に示すように複数のトランシェ(tranche)をつくることができるからです。
トランシェとは、元利の支払い条件や満期までの期間等が同じグループという意味です。
図2 トランシェの意味

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図2では、より優先的に元利金の支払いが行われるClass A(トランシェ)と元利金の支払いが劣後する(後回しになる)Class Bが作られています。
同じローン債権を基にしていますが、1次的な証券(モーゲージ証券)では元利金の支払いが滞る可能性は5%残っています。ところが、2次的な証券ではそうではありません。Class Aでは、元利金の支払いが優先的に行われるため、元利金はほぼ予定通りに返ってくると見込まれます。つまり、元利金が支払われないというデフォルトリスクが低くなっているわけです。リスクが低減されると、それは格付けにも影響を与えます。より確実な支払いには、より高い格付けが付与されるからです。
一方、Class Bは、Class Aのリスクを一手に引き受けています。元の債権で支払いが滞ると、最初に、Class Bの支払いが滞る仕組みです。もちろん、この債券(トランシェ)は格付けが低くなります。格付けが低くなるのと同時に価格も低くなります。
2次的証券が組成される背景には、このように、リスク・リターン特性の異なる複数のトランシェを組成して、投資家の多様な要求に対応する仕組みがあるのです。
もちろん、ここでいう投資家とは、一般的には、機関投資家を指しています。
ここで、元のローン債権をサブプライムローンだと考えてください。モーゲージ証券を組成するのはジニー・メイなどの政府系金融機関と民間金融機関、2次的証券を組成するのは民間金融機関、そして、それらの(サブプライム関連)証券を購入するのも政府系金融機関や民間金融機関あるいは年金基金といった機関投資家。
元々の債権を細分化した証券化という手法は、リスクのバラ売りを可能にしましたが、それと同時に誰がどのリスクをどれほど持っているのか、それを明確にすることを難しくしてしまいました。サブプライム問題の負債の情報収集に時間がかかっている理由はここにあります。